2018年3月10日土曜日

万次郎かぼちゃ栽培講座へ行ってきました!②

万次郎かぼちゃを美味しく作るコツ

ここからは質問対応になります。

農家「子蔓三本仕立てとか整枝について」

山中氏「私は基本的になにもしません。万次郎をのびのび育ててあげます。ただ放っておくと余所の畑に行くのでそんな時は向きを変えます。」

農家「昨年万次郎を作ったら5kgを超える大きなものや沢山イボがある果実ばかりできた。原因は?」

山中氏「それ、どこで買いました?」

農家「タキイ種苗」

山中氏「なるほど。実は私も昨年ここにいる片山種苗さんから苗を購入する段階で、種取りが上手くいかなかったといわれ、半数に減らされまして、タキイから取り寄せました。で、結果は全ての果実を廃棄することになりました!」

「あんなものは万次郎じゃない!ふざけるな!裁判覚悟でせめて苗代と畑にいれた費用を払えとタキイに請求しました。」

「詳細をご説明しますと、沖縄で偽物の万次郎を作らせて、それを鹿児島の集荷センターへ送り、全国へ発送しているようです。総元締めはタキイ種苗でここから「メルシー」や「国華園」といった業者へ流しています。」

「片山種苗さんの万次郎は大きくても3kg程度で揃います。肌も綺麗でつやつやします。偽物は大きくて味のないかぼちゃで、しかも腐ります!まったくの紛い物です。」

「先日も沖縄で万次郎を栽培しているという人から連絡があり、共に万次郎を栽培しているもの同士頑張りましょう。なんて話をしていたのですがよくよく聞いてみると、メルシーから仕入れているようで、それは偽物だ!と言って電話を切りました。」

「沖縄県の人はジョン万次郎に並々ならぬこだわりをお持ちなので一刻も早く偽物の万次郎が消えることを願っています。」

「あとよく話にでるのですがモザイク病はアブラムシを媒介して感染するので、もし、心配なら私も他の作物で実践しているソルゴーで囲う障壁栽培がおすすめです。一条で囲えばアブラムシの被害がほとんどでなくなります。」

「また、万次郎はモザイクがでません。感染はしているかもしれませんが株の勢いがあるので病気が負けます。株が弱ったらでるかもしれませんが、そうならないように元気いっぱいに育てて下さい。」

農家「病気や虫にやられることはないと、無農薬でできるというのは本当なんでしょうか?」

山中氏「本当です。洗剤やタバコなんかを畑に撒く人がいますが、全くいりません。これは栽培してみたらすぐわかると思いますよ。勢いがすごいんですから。」

農家「緑肥の利用は?」

山中氏「私どものグループでは4月の中旬から定植するのですが、中々間に合わないんですよ。夏場は当然畑を万次郎が占領していますし、12月に畑を片付けてすぐ植え付けても満足の行く収量が期待できないので、残念ながら緑肥は使いません。使った方がいいとは私も思うんですが。」

農家「連作障害は?」

山中氏「ありません。もちろん土壌診断をして施肥設計を毎年行っていますが。」

農家「獣害は?対策は?」

山中氏「あります。イノシシは一頭でもかぼちゃが美味しいことに気づくと、一族郎党引き連れてやってきます。私どもの地域では他にもシカがいます。猿は今のところ来ていませんので助かっています。対策は色々してきました。目隠ししたり電柵したり、全部ダメ!電柵なんかはお尻から入られます。行き着くところはワイヤーメッシュですね。ほ場をぐるっとワイヤーメッシュで囲んでいます。二メートルのワイヤーメッシュを30~40cm程地面に打ち込んでいます。隙間が大きいとタヌキやハクビシンが入り込んでくるので下部には目の細かいメッシュをしています。檻の中です(笑)」

農家「元から畑のところでした?田んぼ?開拓地?」

山中氏「水田ですね。段々畑です。中山間地域でやってます。」

農家「規格外は?処分方法は?」

山中氏「もちろん出ます。傷がついたり大きかったり小さかったり色々でますが全て地元のお菓子屋さんが買い取ってくれます。それを加工してお菓子になっているんですね。これは凄く重要なことですよ。反当1000個ですから相応の規格外品がでます。バカにできない収入になります。」

農家「スイカみたいに玉返しとか下に敷いたりした方がいいのでしょうか?」

山中氏「した方が綺麗にできます。安価にしたければ、スーパーから発送スチロールをもらってきてすければよいと思いますよ。ただ私どもは数が数なんで中々そこまで手がまわりません。」
etc

他にも色々お話ししていましたが約二時間濃密で有意義な講座でした。

講師データ
山中通博
1941年生まれ。2009年に高知ものべ川有機農業推進協議会を立ち上げ会長に就任。有機農業による中山間地域の農業の活性化を目指し、個人の経験や勘に頼らない、科学的データを用いた有機栽培技術を習得し、消費者に対して高品質な農産物を安定的に供給できる産地づくりを行っている。

2018年3月9日金曜日

万次郎かぼちゃ栽培講座に行ってきました!

万次郎かぼちゃを美味しく作るコツ

万次郎かぼちゃを上手に作るコツを農家向けに講習するという話を聞き、高知に行って来ました。

講師は「高知ものべ川有機農業推進協議会」会長の山中通博氏です。

片山種苗のおやじさんの挨拶からはじまり、聞いてきた内容を以下に記します。

「美味しい万次郎かぼちゃを作れていますか?私は万次郎を作り初めて16年目になります。栽培当初は万次郎をスーパーやバイヤーに持ちかけても、まずい!すぐ腐る!と売れませんでした。師匠である小祝から栽培技術を学び、高知から生まれたこの万次郎をなんとか広めていきたいと努力し続けて、現在では仲間達と一緒に140本ほどの万次郎かぼちゃを栽培して販売しています。」

「販売先は高知県下では一件のスーパーだけ。後は全て東京、神奈川、千葉、名古屋などの都市圏に販売しています。昨年一番売れたのは東京銀座の三越デパートです。」

「売れるのは有機JAS認定を受けているというのもありますが、一番の理由は美味しいことです。」

「私どもが販売する万次郎は、最高糖度が25.4度。糖度が20度を下回ることはありません。そして腐ることもない。その信頼と実績があるからこそ大きなデパートと取引ができています。」

「消費者は正直で、不味ければ売れません。美味しいから売れる。美味しければ値段が高くても買ってくれます。」

「日本で一番万次郎を生産しているのは九州の熊本ですが、取り寄せて分析してみましたら硝酸値などからやはり化学肥料も使っているようですし、キュアリング期間も少ない(甘味がのっていない)。沢山取れるから沢山販売しても美味しくなければそのうち手詰まりになります。」

「さて、最近の天候不順は凄まじく、まともに作物を育てることが難しい。これは地球上のサイクルで800年ごとに訪れるようで、後20年程度は続くと考えられています。」

「その後に訪れるのは世界的な食糧難です。その食糧難に立ち向かうことができるのは、万次郎かぼちゃだけだと私は考えています。今まではニュージーランドやメキシコから輸入に頼っていたかぼちゃですが、今年から逆に輸出していこうと動いています。」

「前置きはこのくらいにして、美味しい万次郎の作り方についてこれから具体的なお話をしていきます。」

「まずは土作り、そもそも畑は土と微生物が無ければ話に成りません。耕作放棄地などで始めようとするのであれば一反当たり400kgのもみがらと300kg程度の廃菌床など微生物資材を投入してロータリーして下さい。糸状菌によってもみがらの分解を早めることが重要になります。」

「予算がなければえひめAIなど安価なものでも構いません。乳酸菌や酵母菌を餌に土着の菌が定着していきます。土作りはこんなもので十分です。」

「今度は肥培管理ですが、万次郎は皆さんの考えているよりも遥かに多い量の石灰を必要とします。」

「普通の作物は石灰、苦土、カリの比率を5:2:1程にして育てますが、私はこれを10:2:1にします。石灰で丈夫な実や茎葉を作ります。施肥直後はなんとPHが8になることもあります。」

「といいますのもカリが多いとよく成長します。万次郎は他の作物に比べて吸肥力が強く、至るところから根を張り吸収し、実を太らします。そうすると太りすぎるんですね。規格外になる3kg超えを出さないようにするためにも適切な施肥設計が必要となります。」

「一反当たり1000個から1300個の実ができます。一株で平均210個取れますので、反当5株を目安に定植していきます。」

「大体10kg箱に4から6個で出荷していきますので平均2kgを目指します。あと、大きく育った万次郎は腐ります。いや、腐りやすくなります。年内中に腐ると思ってください。」

「窒素、リン酸については様子を見て蔓先に緩行性のボカシ肥料を施します。神奈川で万次郎を作っている方から畑を見て欲しいといわれて、行ってみると全く実がついていない、葉っぱだけの万次郎がありました。話を聞くと月に一度追肥していたそうです。完璧な蔓ボケという状態です。」

「万次郎は栄養成長に偏ってしまうと雌花を自分で落とします。生殖成長にしようとしても、畑から肥料を取り除くことができません。」

「荒療治になりますがそんな時は、蔓から出ている根を引き剥がして下さい。いじめてやることで生殖成長を促します。」

「あと、雄花用株の数も多ければ多いだけいいです。私どものグループでは一対一です。これは異常気象にも繋がりますが、ここ最近蜂の数が激減してきているからです。」

「あっ大事なことを忘れていました!万次郎は生育速度が早く、8月になれば蔓が一日で30cm以上伸びていきます。」

「なのでその前、7月の中旬から下旬にかけて、蔓が伸びていく先の雑草を刈り取って下さい。その時は土の表面をなぞるように、なるべく雑草にダメージを与えることが次に雑草が生えてくるスピードを抑えることに繋がります。」

「なぜこんなことをするかというと、万次郎がそのまま伸びていきますと、新幹線状態!雑草の上をビャーっと伸びていきます。万次郎は節々で大地に根を張り、栄養補給をして実をつけていきますので、雑草の上を走られたらまともな実が取れなくなります。」

「雑草抑えに敷き藁をする方もいます。蔓の伸びる先に順々に藁を敷いていきます。豊富に資材のある方はこちらもおすすめですね。」

「収穫のタイミングですが50日をキーワードに覚えておいてください。蔓上で50日置いてキュアリングの期間を60日とれば出荷できます。」

「是非とも糖度を測るようにしてもらいたいのですが、収穫の時点でヘタからでる汁がありますよね。これが糖度10度を下回っていたら失敗です。土作りか施肥設計か何か問題があります。」

「7月から随時収穫していき、キュアリング期間が40日を過ぎたらどんどん糖度が上がっていきます。反対に90日を過ぎると今度は味が狂ってきますので、60日から90日を目処に出荷販売をして下さい。」

「ということは逆算して12月の初旬に霜が降りるのであれば、10月の中旬以降に着果した実は全て掻く必要があります。蔓が伸びる必要もなくなりますので摘芯していただいて結構です。」

「北海道産のかぼちゃは冬至には尽きますのでそこからが万次郎の本領発揮です。高く買い取ってもらいましょう。」

「生育のスピードが早い万次郎ですから病気や虫、雑草には負けません。これは無農薬で栽培できるということです。これに有機の肥料を使えば有機JAS認定が受けられます。有機JASが受けられるかぼちゃは万次郎だけです!」

「あと、他のかぼちゃに比べ万次郎は多糖類が多く、急激に血糖値を上げる単糖、二糖ではなく、穏やかに血糖値をあげるものですから糖尿の方でも食べることができます。」         
       
「是非とも皆さんで美味しい万次郎を作って、万次郎の価値を上げてください。」

次回へつづく

2018年3月4日日曜日

万次郎かぼちゃの兄弟

万次郎かぼちゃはバリエーションが豊富

昨年、万次郎かぼちゃの苗を購入しようと4月に電話をすると「もう売り切れて予約の受付ができない」と断られました。そこで、なんとかならないか聞くと「よさこい」という品種が万次郎と同じように栽培できると教えられ、購入し栽培しました。

結論から言うと、「よさこい」は万次郎かぼちゃに比べて少し小柄で色艶がよく、食味も香りや味が濃くほっこりとした感じがしました。万次郎かぼちゃと同じ苗の金額でも満足できました。

そこで今年は他にどのようなものがあるか聞いたので以下に羅列します。

万次郎かぼちゃ
樹勢が強く雑草も苦にしない。土作りができていれば、無肥料無農薬放任栽培できる。完全放任栽培でも一株で30個程度は収穫できるという話も。しっかりと手をかけてやれば200個の収穫も夢ではない。雄性不稔ではなく、初期と末期には雄花をつけるが、花を落としたり花粉が少ないので受粉用に別の株が必要。食味はねっとりと粘質で甘い。かぼちゃらしい香りもあるのでスープやポタージュ、ペーストやフレークなどにしてお菓子など加工品に利用される。煮物は果肉が柔らかく煮崩れする。また、甘味が強いので砂糖無しで調理できる。

よさこい
樹勢は万次郎に匹敵するか少し弱い程度。収穫数は万次郎とほぼ同数。万次郎に比べて色は濃緑で果実は一回り小さい(1.5~2.5kg)。万次郎と同様に受粉株が必要。食味は万次郎に比べて香りや味が濃く、ややほっこりとしている。小柄で美味しい万次郎といった印象。見た目も綺麗で青果販売には万次郎より向いている?

白竜
某巨大掲示板でも話題にあがっていたが、万次郎より粉質の品種。樹勢は変わらず、受粉株がいることも同様。果実は万次郎よりスマートで淡緑。万次郎よりは白いといえる?

白宝
これも同様に某巨大掲示板で話題にあがっていた。白竜の小型品種で、収穫数が万次郎の1.5倍とのこと。受粉株がいることも同様。万次郎に比べて粉質の品種。

栗万次郎
これまでは万次郎の母親が違う品種ばかりだが、こちらは父親が違うとのこと。粉質の日本かぼちゃを使った新品種。強い粉質で粘質を嫌う層向けに作られたようだ。詳細は不明。

他にも色々と試されているようで栗白竜?栗白宝?などもあるようです。興味のある方は問い合わせしてみてください。